本磁力式射出装置（以下、本装置）は、宇宙空間に浮遊するデブリ（老朽化した人工衛星、故障により制御不能に陥った人工衛星等）を除去することを目的に考案した磁力式射出装置です。

本装置はロケットを使用して宇宙空間に運ぶ必要があるため、安価でかつ軽量にする必要があります。そのため、本装置は部品点数の少ない磁力式（コイルガン方式）を採用しています。

射出機構を磁力式とすることにより、構造の単純化と軽量化を実現することが可能となります。

射出装置の構造

スイッチ回路	射出用の中空コイルへの電力供給用スイッチです。 センサーからの信号を受け取り電力の供給を止める機能を有します。
筐体	コイル部を内部で支える構造と複数の射出装置とを連結するための構造を持つ筐体です。
電源装置	射出物を発射するために使用する大容量高電圧の電力を蓄積するために必要な回路を搭載しています。人工衛星１機につき１台または予備のために２台搭載します。
制御装置	射出物を発射するための制御を行います。 人工衛星の制御システムから射出する射出物の番号情報を受け取り射出操作を行います。 人工衛星１機につき１台または予備のために２台搭載します。
射出物通過位置センサー	射出物射出時に射出物がコイル部の中空コイル内の中間地点に達したことを検知するためのセンサーです。コイル部の中空コイルへの電力供給を停止させるために使用されます。
コイル部	使用する射出物の直径と全長に合わせてコイル部の直径と全長を決定します。 また、コイルに使用する導線の太さも使用する射出物の直径と全長に合わせて決定します。
射出物	射出物は本装置１基毎に１発づつ搭載した状態で使用します。

※標的となるデブリの選択及び目標位置等の測定は、遠距離用、中距離用、近距離用の光学式カメラ等を別途搭載して行い、本装置の射出口をデブリに向けてから射出コマンドを本装置の制御装置に送るようにします。

複数搭載時の接続

本装置はコイル部筐体を複数連結して搭載することが可能な構造を有しています。 それぞれの搭載方法時の射出のための電力の供給方法も併せて示します。

1）横列

2）縦列

3）縦横列

4）その他 本装置の特徴として、本装置は射出物の射出用電力線と制御装置間との２本の信号線を接続できる位置であれば本装置を搭載する人工衛星の構造に合わせて本装置の搭載位置を自由に設定することができます。

射出装置の射出制御

1)外部コマンド方式
本装置を搭載した人工衛星のシステムから射出物を射出するためのコマンドを通信で受け取り射出物を射出する方法です。 射出物の射出シーケンス終了信号も通信で返します。

2)外部信号方式
本装置を搭載した人工衛星のシステムから射出物を射出するためのトリガーとなる信号を接点方式で受け取る方法です。射出物の射出シーケンス終了信号も接点出力を使用してパルス信号等で返します。

射出物の種類と構造

デブリの除去を目的とした射出物の例

■単純形状の射出物
形状が、球体、三角錐、砲弾型など比較的単純な形状を持つ射出物で、標的となるデブリに命中させてその場から移動させることを目的とした射出物です。

■粘着ゲルシート付き射出物
先端にシート状にした粘着ゲルを搭載した射出物で、デブリに貼り付き射出物の運動エネルギーをデブリに伝えることによりデブリの軌道を変更することを目的とした射出物です。

上記の射出物は同一の射出装置で射出することができます。

■ネット（網）を搭載した射出物
ネットを搭載した射出物で、宇宙空間に漂うデブリを一纏めにしたり、大きめのデブリに絡めたりして射出物の持つ運動エネルギーを伝えることにより、デブリを移動または除去を行うことができる射出物です。
この射出物を射出する射出装置は、使用するネットの大きさやおもり部分の個数に応じてコイルの直径を合わせた射出装置で対応します。

単純形状の射出物

この射出物は、デブリの除去を目的とした射出物です。 下記に概要を示します。

粘着ゲルシート付射出物

この射出物は、先端に粘着性の高いゲル状の粘着シートを搭載した構造になっており、射出された射出物がデブリに貼り付くことにより、デブリを現在の軌道から押し出す効果が期待できる射出物です。
また、この射出物はデブリとの衝突時の角度が直角でない場合でも粘着面の可動域内であればデブリに取り付くことが期待できる射出物です。 概要を示します。

弾丸型の射出物でデブリを移動させようとした場合、射出物とデブリとの衝突時の角度がほぼ直角でないと下記のように射出物がデブリによって弾かれるため力が分散されてしまいデブリを期待通りの方向に移動させることができないことが考えられます。

粘着ゲルシート付射出物であれば、デブリと射出物との衝突時の角度が粘着ゲルシートの可動範囲内であれば射出物はデブリに取り付くことが可能なため射出された射出物の運動エネルギーを全てデブリに伝えることが可能になると考えられます。
また、粘着面がゲル状のためデブリ表面に凹凸がある場合でもデブリに取り付くことが可能な構造となっています。

ネット（網）を搭載した射出物

この射出物は、網を搭載した射出物で複数のデブリを一つに纏めたりデブリ自体に絡みついてデブリを移動または除去させることを可能とした射出物です。
錘部分（青色の部分）が複数個組み合わされており、ネットの大きさに応じて個数を変えて対応します。

そして、射出後に搭載した網が展開する構造を有しており、これによりデブリを捉えます。

使用する部材について
本装置を構成するための全ての部材ですが、宇宙空間での使用やロケットでの打ち上げ時の衝撃や高温での使用に耐えることのできる部材を使用するため、機密等の理由により本文内には記載をしていません。